医療のしおり/外科的診療Medical news

リウマチと骨粗鬆症について

骨粗鬆症による骨折
骨が脆くなったお年寄りに多い骨折として有名なのが、
(1)腰椎圧迫骨折
(2)橈骨遠位端骨折
(3)大腿骨頚部骨折
(4)上腕骨頚部骨折
がありますが、このうち①②は骨折による痛みのため長期臥床をしいられ、そのため結局寝たきりになる事があります。 寝たきりの原因として脳血管障害に次いで多く約12%であり、また第3位はリウマチを含む下肢関節炎が約10%との調査結果が報告されています。 このため骨粗鬆症について啓蒙運動が広がり、かなり広く理解された疾患となってきていますが、まだ理解不十分な所や、誤解された事もあります。 以下の稿で詳しく説明したいと思います。
骨粗鬆症とは
骨代謝学会の定義では骨量の低下、骨組織の微細構造の変化を特徴とし、骨の脆弱化とその結果骨折の危険の増大を来した疾患とされています。これだけを読むと何が言いたいか分かりませんが、つまり骨を卵に例えるなら殻も、中の白身も黄身もカスカスになって脆くなり、そのため些細な事で骨折する危険性がある状態であると言うことです。
骨塩量・骨塩量測定とは
骨塩量とは骨を構成する組織の量であり、骨塩量測定とはその量を測ることで骨粗鬆症の診断やその程度を把握するために行われる検査です。骨塩量測定には一般的に骨が脆くなったお年寄りに多い骨折として有名なのが、
(1)DXA(レントゲンにより腰椎または大腿骨頚部を計測)
(2)QUS(超音波により踵を計測)
が用いられていますが、DXA法がより体全体の骨塩量を反影するとされています。
診断
DXA法での計測が、最大骨塩量(おおまかに言うと若い時)の70%以下 (ステロイド内服リウマチの患者の場合80%以下)が診断基準とされています。 ここで気を付けないといけない点は、もし充分骨塩量があったとしてもその時点での数字であり、 急速に減少している最中かもしれないということです。 ですからやはり充分骨塩量がある方でも、経時的に少なくとも1年に1回の計測が望ましいのです。 また骨塩量測定とは別に骨粗鬆症による骨折(上記の①腰椎圧迫骨折②大腿骨頚部骨折 ③橈骨遠位端骨折④上腕骨頚部骨折)の既往がある場合が骨粗鬆症と診断され、治療の必要が あるとされています。 これはこれら既往がある場合、新たに他に骨折する可能性が高いと報告されているからです。
他の検査は
尿の検査でDpdまたはNTXと呼ばれる、骨が壊される際にできる物質(骨吸収マーカーとも 言います)を計測します。この数字が高いならば、骨塩量は今、減少中ということなのです。 また治療後に低くなっているなら、今使用している薬剤が効いていると言う事になります。
治療は
患者自身が、しなければならない事は、適度な運動(1日30分の歩行、または1日9000歩以上 の歩行)、減量、バランスのとれた食事(塩分、甘いものは避ける、カルシウムを食事の度に 少量づつでもとるようにする)等などがいわれています。薬物療法としては、
〇ビスホスホネート製剤(骨量増加作用が1番あると言われています)
〇活性型ビタミンD3製剤(日本で一番使用されています)
〇カルシトニン製剤(筋注射または点鼻薬)
〇カルシウム製剤
〇エストロゲン製剤(海外では第1選択薬)
などがあります。
リウマチの患者は骨粗鬆症になりやすのか?
以下の事項が報告されています。
〇リウマチの患者は骨粗鬆症を合併している
〇罹患関節周辺に骨粗鬆症が認められる
〇四肢骨骨折の危険性が健常人より高い
〇健常人と同じ骨塩量でも骨折率が高い
これらの理由として
〇ステロイド内服のため・・・ステロイドは腸管においてカルシウム吸収抑制排出促進、性腺抑制により女性ホルモンを抑制するためと言われています。ただし内服量、期間相関は一定せず、個人差がかなりあります。
〇サイトカイン産生のため・・・炎症を起こしている関節では、滑膜が増殖しそこでは種々のサイトカインが産生放出されるために生じると言う説
〇廃用説・・・宇宙などの無重力での生活は、骨粗鬆症を生じる事が報告されています。リウマチ患者は腫脹疼痛関節があるならばそのため、動かさない、動かない、動けない状態になり、安静にするため骨粗鬆症を生じると言う説。またこのため筋肉も減少し転倒しやすく骨折しやすいと考えられます。個人的意見ですがやはり③廃用説が1番の理由ではないでしょうか。時折リウマチ患者で骨粗鬆症になるのがいやだからステロイド内服を嫌われる方がおられますが、ステロイド内服してでも動ける状態の方が骨量の減少を少しでも防げるのではと考えます。つまり骨粗鬆症を防ぐにはリウマチコントロールが絶対条件である考えます。