関節リウマチ以外の重要なリウマチ性疾患
12.混合性結合組織病について
奥田 恭章
- 症状と特徴
- 複数のリウマチ性疾患の症状を有しながら、すなわち、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、関節リウマチ等のいずれも診断がつかない患者さんで、血液検査で抗RNP抗体という自己抗体が高い値で陽性を示す疾患を混合性結合組織病といいます。女性が圧倒的に多く(男女比約1:15)、30—40歳代の発症が多いですが、小児から高齢者まであらゆる年齢層で発症します。関節炎(関節痛)、レイノー現象、手指及び手背の全体の腫れ、軽度から中等度の筋炎、リンパ節腫脹、軽度の皮膚硬化(手指)、発熱、間質性肺炎、肝腫大、脾腫大、皮疹などのリウマチ性疾患(膠原病)に特徴的ないくつか症状を示しますが、各疾患の診断基準を満たさす、腎症をほとんど来さないことを特徴としています。この病気の経過で5年以上の長期に経過を追うと、強皮症や全身性エリテマトーデス、関節リウマチに移行する患者さんも約半数おられることから、“未分化”あるいは“分類不能”結合組織病と呼ぶほうがいいと言われることもありましたが、長期経過でもやはり一つの病気の診断に確定できず、同様の経過をたどる患者さんも多く、厚生労働省の難病治療研究疾患に指定されていますので、上記特徴を有する患者さんは、混合性結合組織病として診療、治療します。特定のリウマチ性疾患に移行した症例は、それぞれの疾患に応じた治療を行います。また、発症早期より複数の診断の確定したリウマチ性疾患を合併する症例は(たとえば、強皮症+皮膚筋炎、強皮症+関節リウマチなど)、オーバーラップ症候群と呼ばれ、それぞれの病態に応じた診療と治療を行います。
- 治療
- 基本的に生命予後が良好なのが特徴で、ステロイド治療によく反応し、初期の中等量ステロイド治療後に維持量(プレドニン5mg/日前後)で、仕事や日常生活が普通にできる患者さんが多いのが特徴です。なおそれぞれの症状に応じて、血管拡張剤や消炎鎮痛剤等を用いることがあります。
- 注意点
- 基本的に予後良好な病気ですが、一部の患者さんで肺高血圧症を併発することがあり、定期的な検査(心エコー、呼吸機能検査、採血(心不全等で上昇する検査項目のチェック)を行います。労作時の息切れや浮腫の出現時は、軽度でも主治医に相談し、併発の有無をチェックすることが重要です。肺高血圧は早期に診断すると治療法の進歩により大幅に予後が良くなっていますが、進行すると生命予後のきびしい併発症です。