医療のしおり/外科的診療Medical news

関節リウマチと骨折について
上田 俊一

はじめに
リウマチ患者さんでは、関節に炎症がある、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を服用している人が多い、健常人に比べて運動量が少ないなどの理由で、骨がもろく骨折しやすいと言われています。特に関節周囲の骨は弱くなっていて、骨折に注意が必要です。一般に、骨粗鬆症による骨折は、肩、手首、股関節、腰に多いのですが、リウマチ患者さんでもおおむね同じことがいえます。この中で特に注意が必要で、治り具合によっては大きな障害を残す可能性があるのは、股関節(大腿骨頸部骨折)と腰(胸椎、腰椎圧迫骨折)です。
股関節の骨折(大腿骨頸部骨折)
まず、股関節の骨折(大腿骨頸部骨折)についてのべます。多くは、転倒した際におしりの外側を打ちつけて受傷しますが、骨の弱っているリウマチの患者さんでは、足を強くひねっただけでも、骨折することがあります。また、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期間服用しているような方の場合、これといった力が加わっていないのに、自然に骨折することがあります。転んでおしりを打った後、股の付け根が痛くて歩けなくなった場合はもちろんですが、股の付け根が重苦しくて歩きにくい状態が続くときは、骨折の疑いがあります。かかりつけの病院で、レントゲン検査を受けた方がいいでしょう。この骨折の場合、「ズレ」が少ないときは、安静で治ることもあります。「ズレ」がはっきりしている場合は、骨をつなげる手術や、人工骨頭(人工関節)置換術が必要になります。
腰の骨折(胸椎、腰椎圧迫骨折)
次に、腰の骨折(胸椎、腰椎圧迫骨折)についてのべます。この骨折は通常は、お年寄りがしりもちをついたり、重たいものを持ち上げた際におこします。リウマチの患者さんで、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期間服用しているような方の場合、比較的若い方でも前述のような動作で骨折することがあります。リウマチ患者さんでも、高齢になってくると、前述のようなことがなくても、自然に腰の骨が潰れることがあります。ぎっくり腰だと思って様子を見ていたものの、痛みがなかなかひかないので、レントゲンを撮ってみたら、圧迫骨折だった。というようなことは、私たちもしばしば遭遇します。この骨折をおこした場合、コルセットやギプスで固定するのですが、リウマチの患者さんの場合、きつい固定には耐えられない方が多いものです。骨がある程度固まるまで、我慢して安静にせざるをえません。潰れ方が悪く、骨が神経を圧迫してしまった場合は、足がしびれたり、ひどいときには動かなくなったりして手術が必要になるときがあります。このようなことにならないまでも、骨折に気づくのが遅くてぺちゃんこに潰れて治ってしまった場合は、多くの場合、腰の痛みが慢性化します。
その他の骨折
これらの他にも坐骨(イスなどに坐った際、イスにあたるおしりの骨)や恥骨(股の付け根の細い骨) も軽い外力で骨折することがあります。いずれにしても、不自然な痛みが続くときは、思い当たるようなふしがなくても検査を受けてみる必要があります。 また、一回レントゲンを撮って骨折がなくても、怪しいときはしばらくたってもう一度検査を受ける必要があります。 2回目の検査で初めて骨折の存在が判明することもしばしばあります。
さらに、人工関節の手術をすでに受けている方では、転倒には特に注意が必要です。 人工の膝や股関節、肘などの近くを骨折した場合、せっかくしっかりとしていた人工関節を入れ替えなければならないこともあります。 一戸建ての家に住んでおられる方は、なるべく1階で生活し、段差をなくして、浴室などは滑らないように工夫しましょう。