関節リウマチ以外の重要なリウマチ性疾患
5. 多発性筋炎、皮膚筋炎
奥田 恭章
- 症状と特徴
- 両側の足の力が入りにくい、立ち上がりにくい、その後、手が上げにくくなり、整容動作などに支障をきたしてくるなどの筋脱力が亜急性に生じて発症するのがこの病気の特徴です。 関節リウマチが、関節に対する自己免疫を主体とする病気であるのに対して、この病気は筋肉を主なターゲットに犯す自己免疫疾患です(多発性筋炎)。このうち、皮膚症状を合併したものを皮膚筋炎といい、手の指の関節や肘や膝の伸側にかさかさとした紅斑ができたり、目のまぶたが、薄紫色に腫れたりするのが特徴です。また、爪の周りのあまかわの不整、小さな黒点が見られたり、レイノー現象といって、冷たいところに行ったり、水を使ったりしたときに指の何本かが、真っ白になってしびれ、その後、紫色、赤色となりもとにもどることもしばしば生じます(血管が一時的に収縮するためにこれらの症状がでます)。血液検査で、筋原性酵素(CPK,LDH,ALDなど)が上昇し(筋細胞の破壊を反映します)、自己抗体(抗核抗体、抗Jo-1抗体など)が陽性の場合はほぼこの疾患の診断がつきます。他の筋力低下を来す疾患(甲状腺機能亢進症による低カリウム血症や一部の高脂血症の薬の副作用など)を医師は除外診断します。治療にあたっては、MRIや筋生検で確定診断及び病勢や病態の把握を行うことが一般的です。
- 治療
- ステロイドホルモンが第一選択で当初、体重1kgあたり1mgで治療を開始して、筋力や他の症状、検査所見の改善とともにゆっくりと減量してゆきます。 治療に対する反応が良くない場合や、再発時などは、数種類の免疫抑制剤から病態に応じて適切なものを併用して加療します。多くの方でほとんど症状のない寛解になりますが、ステロイド剤や免疫抑制剤は、維持量を継続しないと再発しますので必ず飲み忘れないようにする必要があります。ただし、長期寛解の方は、維持量の減量も可能になる場合もありますので、医師に相談してください。
- 注意点
- この病気の合併症として筋炎発症、1−2年後を中心に悪性腫瘍(胃癌、肺癌など)が見つかることがあります(特に、皮膚筋炎や高齢者の方に頻度が高い)。したがって、全身の癌検診は発症後重要です。また、間質性肺炎を合併することもしばしばあります。この場合は、ステロイド剤とともに早期よりの免疫抑制剤によるしっかりとした治療が必要となります。