医療のしおり/内科的診療Medical news

関節リウマチと骨粗鬆症について
茂久田 翔

骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、「骨折するリスクが高い」ことを意味します。日本国内の骨粗鬆症患者は推定で900万人とも言われます。以下に代表的な骨粗鬆症による骨折の例を挙げます(画像1)
①上腕骨骨折
②椎体骨折
③前腕骨骨折
④大腿骨頚部骨折
骨粗鬆症を放置していると、骨折を引き起こす可能性がどんどん高くなります。というのも、一般的な骨粗鬆症の原因は、「加齢」です。例えば、上記④の骨折は、女性は65歳以上、男性は70歳以上で増加します。女性ホルモンの減少と骨粗鬆症は関係が深く、そのため女性の方が早くから骨粗鬆症になると考えられています。
図1
たかが骨折と侮るなかれ
関節リウマチの患者さんに当てはまるかは分かりませんが、骨折は寿命を短くする、と考えられています。例えば、大腿骨頚部骨折を起こした患者さんの5年後の生存率は、約50%です。骨粗鬆症そのものには症状がありませんが、骨折を起こした後のことを想像すると、骨粗鬆症の治療をきちんと行うことの重要性が理解できると思います。
骨折のリスクを評価する
「骨密度」といえば多くの人が一度は聞いたことがあると思います(当院でも測定することができます)。骨密度が低い患者さんは、将来骨折するリスクが高いと考えられます。しかしながら、骨密度が低くても骨折しない人もいますし、骨密度が高くても骨折する人もいます。骨折のリスクは、年齢、性別、骨密度、喫煙、使用している薬剤、などによって総合的に評価すべきと考えられるようになってきました。 「FRAX」という、将来の骨折率を予測できるシステムがあります。日本人用のFRAXのホームページも開設されており、骨密度が測定できなくても計算可能です。FRAXで主要骨折の10年危険率が15%以上の場合には、薬物治療を開始することが推奨されます(75歳未満の場合)。(図2)
図2
関節リウマチと骨粗鬆症
関節リウマチの患者さんは、骨折のリスクが高いと考えられています。運動ができない事、薬物の影響、そして、病気自体の影響など、複数の因子が関与しています。上に示したような①~④の骨折も起こりますし、一般的には頻度の低いと考えられる、関節周囲の骨折(膝や肘など)も起こります。治療法については、以下に述べるような一般的な骨粗鬆症の治療を行うことになります。
骨粗鬆症の治療
1.食事:カルシウムの摂取、ビタミンD及びビタミンKの摂取 2.生活習慣:糖尿病、慢性腎障害、肺気腫(COPD)、などは骨粗鬆症の危険因子です。日々の食事や運動に気を配りましょう。また、禁煙も大切です。 3.薬物療法:骨粗鬆症に使用される薬剤には、以下のようなものがあり、単独ないし併用 で使用されます。どの薬剤であっても、年単位で継続して治療を行うことが必要です。
(1)特に効果が高いとされる薬剤
アミノビスホスホネート製剤
選択的エストロゲン受容体修飾薬 (SERM)
ヒト副甲状腺ホルモン製剤
十分量のカルシウム及び非活性型ビタミンDの併用
(2)軽症の場合、又は、補助的に使用される薬剤
活性型ビタミンD3製剤
ビタミンK2製剤

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