医療のしおり/内科的診療Medical news

腎臓と関節リウマチについて
的塲 謙一郎

腎臓の働き
腎臓は、体の背部にある握りこぶしほどの大きさの臓器で、通常2個あります。心臓から送り出される血液の20%以上が流れ、毎日200ℓもの血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排泄しています。ろ過は糸球体と呼ばれる小さなフィルターを血液が通ることによって行われ、腎臓1個には、この小さなフィルターが約100万個つまっています。腎臓が障害を受けると本来もれないはずの赤血球や血液中のタンパクが尿に漏れたり、血液の浄化を適切に行うことができなくなり、老廃物や体液が蓄積したりすることがあります。そのような状態を把握し治療を行ってゆく上で、新たなCKD(慢性腎臓病)という概念が導入されてきました。
CKD(慢性腎臓病)とは
近年腎機能低下と心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患との間には密接な関わりがあることが明らかとなり、腎臓を守ることは、心臓や脳を保護することにつながると考えられるようになりました。
そこで登場してきたのがCKD(慢性腎臓病)という新たな概念です.具体的には、CKD(慢性腎臓病)とは、腎臓の働き(GFR)が健常人の60%以下に低下(GFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を表すもので、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、メタボリックシンドローム、腎臓病、腎臓病の家族歴などが危険因子と考えられています。もちろん年令とともに腎機能は低下しますので、高齢者になるほどCKDが多くなります。
CKDと病期
腎機能を表す指標として、糸球体濾過量(GFR)があります。
GFRとは糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値であり、現在は血清クレアチニン値を元にした推算GFR(eGFR)が臨床現場では用いられます。
健康な人では、GFRは100mL/分/1.73㎡前後ですが、タンパク尿などの腎障害がなくとも、60mL/分/1.73㎡未満が持続していればCKDと診断されます。

さらにGFRの低下度によりCKDの重症度(病期1から5)が分類され、進行するほど脳卒中や心臓病などの心血管疾患の危険が高まります。しかしGFRが90mL/分/1.73㎡以上であっても、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、メタボリックシンドロームなどはCKDの危険因子あり、注意しておく必要があります。GFRが15mL/分/1.73㎡未満になると、末期慢性腎不全となり透析が必要となります。

CKDでは原疾患がなにであれ、腎機能低下の程度で分類されますが、関節リウマチに見られる腎障害は、様々な変化が糸球体を中心に見られることが明らかとなっておりその一部について記します。
膜性腎症
薬剤性(抗リウマチ薬)のものが多いとされていますが、当該薬剤未使用者にも見られることがあります。薬剤性のものであれば当該薬剤中止により尿異常は改善することが多いとされています。
びまん性メサンギウム増殖性糸球体腎炎
リウマチ患者さんの検尿異常時には積極的に腎生検がなされるようになり、最近では軽度のメサンギウム増殖性糸球体腎炎が多く報告されています。蛍光抗体法では日本人ではlgAの沈着が多いとされています。治療は原発性 lgA腎症に準じて治療し、ステロイド療法を行う場合もあります。
腎アミロイドーシス
リウマチに合併するアミロイドーシスは全身の臓器障害を起こしますが、腎臓に沈着した場合、タンパク尿が出現し、腎機能障害を引き起こします。罹患期間の長い治療抵抗例での合併が多いとされています。治療法等は、当院、奥田先生が書かれているアミロイドーシスのページを 参考にしてください。上記以外にも膠原病合併例などに腎機能障害が認められることがあります。
CKD(慢性腎臓病)の予防、治療
CKDの治療の目標は、末期腎不全への進行を遅らせることと、心血管イベントを予防することにあります。
そのためには、関節リウマチに合併している高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、きちんと治療をしておくことが大切です。関節リウマチの治療も生物学的製剤の登場により大きく進歩したとはいえ、まだまだ治療には様々な薬剤を必要とします。投与された薬剤の排出路として腎臓は非常に重要な臓器ですので腎臓を守ることはリウマチの治療を続けるうえでも重要なことと思います。

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