内科的診療

関節リウマチ以外の重要なリウマチ性疾患
11.抗リン脂質抗体症候群について 奥田 恭章

症状と特徴

血液中にリン脂質あるいはリン脂質と結合する蛋白に対する抗体ができ、動静脈血栓症、習慣性流産、血小板減少症などの症状を示す症候群です。一次性(基礎疾患のないもの)や感染症後に併発する方もいますが、全身性エリテマトーデス(SLE)や他のリウマチ性疾患(関節リウマチやシェーグレン症候群など)に合併することがしばしばあり、リウマチ性疾患の診療において注意深い観察が重要です。臨床症状として、血栓症がもっとも重要です。動脈血栓症としては、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞、下肢動脈血栓症(下肢の血行不良や壊死)などをおこすことがあり、リウマチ性疾患を有する比較的若い人がこれらの病気を併発した時は本症候群併発を強く疑います。静脈血栓症としては、下肢の深部静脈血栓症が多く(下肢の浮腫と痛みを生じます)、血栓が肺内に移動し肺塞栓症(胸痛や呼吸困難を起こします)という重症状態を生じることもあります。慢性に経過し、肺高血圧症の原因になることもあります。次に注意すべき症状は、自然流産です。一般に妊娠中期から後期に生じることが多く、原因は胎盤梗塞による血流障害と考えられています。しかし、妊娠10週以内の繰り返す流産、重症妊娠中毒症なども来すことがあり、流産を繰り返す場合は、基礎疾患の有無に関わらず、本疾患の精査が必要です。血小板減少症も検査異常として生じることがありますが、通常は軽度の血小板低下で臨床的に問題となることはきわめてまれです。診断は、採血によって、活性化部分トロンボプラスチン時間延長、梅毒血清反応擬陽性があれば、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテインⅠ抗体、ループスアンチコアグラントを複数回測定し2回以上で陽性で、上記臨床症状が認められれば本症候群と診断されます。

治療

急性期の治療後は病状に応じて薬を使い分けます。抗凝固療法、抗血小板療法という血栓の発症予防を中心に治療を行います。具体的には、動脈血栓症では、少量アスピリンや血小板凝集抑制剤の投与、静脈血栓症は、ヘパリン投与及びワーファリン継続投与、習慣性流産では妊娠中に少量アスピリンとヘパリンの投与が一般に行われます。

注意点

抗リン脂質抗体を有する人の一部にしか臨床症状は出現しないため、無症状の場合は予防的な抗血栓療法は基本的に行いません。一方極めて希ですが、感染症併発時、手術時などに、劇症型抗リン脂質症候群(多臓器に短期間に血栓症をおこす病態)を生じることもあり、抗凝固療法、大量ステロイド剤、血漿交換療法にて集中治療を必要とする病態になることもあり、注意が必要です。

リウマチ科・整形外科・内科