外科的診療

リウマチによる手の腱断裂について  安達 永二朗

リウマチの患者さんが、ある日突然指が伸びなくなることがあります。 手首の周りの腱が集まっている部分で、腱が切れてしまったためです。 屈筋腱(指を曲げるスジ)が切れることもありますが、ほとんどが伸筋腱(指を伸ばすスジ)に起こりますので、 ここでは伸筋腱断裂について述べたいと思います。 リウマチによる滑膜炎が、手の腱に波及したり、手首の骨が変形したためにこの上を通る腱がこすれて、 すり切れることがあります。

伸筋腱断裂によって起こる症状。一番多いのが小指の握り拳のところの関節(MP関節といいます)が伸ばせなくなる症状です(図1)。

図1.伸筋腱断裂によって起こる症状
図1

時には薬指からおこったり、親指の第1関節が伸ばせなくなることもあります。 この断裂は、何かをしていて急に起こることもありますが、自分でも気がつかないうちに自然に起こっていることが多いようです。 伸筋腱断裂の注意しなければならないことは、 1本の腱が切れると、次々に隣の腱も切れていくことが多いことです。 3本の腱が切れてしまうこともしばしばですし、 ひどい場合には、親指以外のすべての腱が切れてしまうことも希ながらあります。

危険信号。手背に、指の運動に伴って動く小さな固まりができている場合、腱鞘滑膜に炎症が及んでいることが疑われます(図2)。

図2.指の運動に伴って動く小さな固まり
図2

尺骨頭(図3参照)は本来丸く滑らかですが、この骨が変形して尖っている場合、 尺骨と橈骨の間の部分の骨が融けて、間が広がっている場合などは、要注意です(図4)。

図3.尺骨頭 図4.尺骨と橈骨の間の部分の骨が融けて、間が広がっている場合
図3 図4

治療。治療は手術になります。切れた腱の切れ端同士はつなげることができません。 このため、切れた腱は、切れていない腱に結びつけます。例えば、小指の腱が切れてしまったときは、 小指の腱を薬指に結びつけて、薬指の腱の力で小指も伸ばすようにします(図5)。

図5.小指の腱を薬指に結びつけて、薬指の腱の力で小指も伸ばすようにします 図6.尺骨と橈骨の間の部分の骨が融けて、間が広がっている場合
図5

まだ切れていない指の腱の力で、腱が切れてしまった指を伸ばす手術なので、 切れた腱の数が少ない方が、手術後の機能も良好です。私たちの経験上、切れた腱が2本までなら、 手術によって比較的満足のいく機能を取り戻すことができますが、3本切れてしまうと、 手術してもなかなか良好な機能を取り戻すことができません。 もし、不幸にして腱が切れてしまったら、早めに覚悟して、手術を受けられた方がいいでしょう。