外科的診療

人工肘関節置換術の説明  安達 永二朗

人工肘関節置換術

肘の関節は、上腕骨、尺骨、橈骨という3本の骨が組み合わさってできています。関節の表面は、軟骨という組織におおわれていてツルツルしています。このため肘の曲げ伸ばしがスムースに行えるわけです。関節リウマチによって関節が破壊されると、まずこの軟骨が消失し、次いでその下の骨がむき出しになって、表面が凹凸になります。関節リウマチによって肘関節が破壊されると、本来非常に滑らかな関節表面が凸凹になります。こうなると、肘関節が固まって動きが悪くなったり、痛みを伴うようになります。また、関節の骨が摩耗して、溶けてなくなっていくと肘関節がぐらぐらになっていくことがあります。あなたの肘はこのどちらかの障害があるため、人工関節置換術を行うことを考慮するものです。手術の目的は、この凸凹になった関節の表面に人工関節を埋め込み、滑らかで安定性のある関節面を再建することです。

図1 図2
手術方法

回内外運動(手のひらを上に向けたり下に向けたりする運動)がスムースに行えるようにするため、とう骨頭を1cmほど切除します。肘では、肘の後ろ側に約15cmの切開を加えます。尺骨神経を約10cmほど露出させて周囲の組織との間をはがし、肘の内側前方に移動させます(手術の際にこの神経が損傷されないように、手術野から遠ざけるためです)。上腕三頭筋という肘を伸ばす筋肉をV字状に切り開いて関節内部に到達します。腫れや痛みの原因となる滑膜を切除します。骨から靱帯をはがして関節を脱臼させます。受け皿にあたる尺骨側は表面の軟骨や骨を半球状に削って高密度ポリエチレン製の人工関節を差し込み、骨用のセメントで固定します。上腕骨側は関節表面の骨を数ミリ削って金属製の関節の表面(人工関節)をかぶせます。この人工関節には太さ数ミリ、長さ数センチのステムといわれる金属製の柄がついていて、骨の中に差し込んで骨用のセメントで固定します。脱臼を整復して、筋肉などを縫い、関節が安定していることを確認します。手術後は二週間関節の安静を保った後リハビリを開始します。

図3 図4
図5 図6
この手術によって期待されること

まず、痛みがほとんどなくなり普通に使う分にはほとんど気にならなくなります。手術前に関節がぐらぐらしていた人では、術後関節がしっかりします。肘は100度以上の屈曲が期待でき、術前顔に手が届かなかった人でも、術後顔に手が届くようになると期待できます。肘の伸びに関しては、あまり改善は得られません。

合併症

尺骨神経という肘の内側を走行している神経が、時に傷害されることがあります。薬指と小指のしびれがしばらくの間続くことがあります(20%程度)。 5%程度ですが、このしびれが残る人もいます。関節が脱臼を起こしてギプスでの固定を必要としたり、関節が脱臼しないように再度関節を縫い縮める手術を要することもあります(4%程度)。肘の周りを走行している神経(正中神経、とう骨神経)が損傷される可能性もあります(1%以下)肘の先端の創が治りきらず、再度皮膚を縫い直さないといけなくなることがあります(5%以下)。細菌が感染して、関節を洗浄したり、最悪の場合は人工関節を抜去しなければならないことがあります(1〜2%)。

手術をしないで経過を見た場合の見通し

リウマチの肘関節の破壊による機能障害には、関節の動きが悪くなって固まっていくタイプと、関節の骨がとけて関節がぐらぐらになるタイプがあります。関節の動きが悪くなって固まっていくタイプの方の場合は、少しずつ関節の曲がりや伸びが悪くなっていきます。関節が固まってしまってから手術すると、曲がりは良くなりますが、伸びは改善が期待できません。ぐらぐらになってしまった後では、手術そのものができないか、手術しても人工関節に早期にゆるみが発生する可能性が高くなります。また、関節の骨がとけて細くなった場合、軽い力が加わっただけで骨折したりすることがあります。