全般

ホリスティック医療を目指して

関節リウマチは他の慢性疾患と比べますと、疼痛や機能障害に悩まされることが多く、薬の効果発現に時間がかかり、進行性で全身の合併症を伴う場合があることから、患者さんにとっては、身体的苦痛のみならず、精神的苦悩も計り知れないものがあると考えられます。身体的苦痛に対しては関節内注射をしたり、リハビリをしたり、効いてくれることを念じながら薬を処方することができますが、精神的苦悩に対しては、一般には為す術が無いに等しく、お話を伺って自らの悩みとして同化させるのが精いっぱいであります。こんなときホリスティックな知識があれば、もうひと工夫患者さんにアドバイスができ、何らかの方向性を見出せる可能性があるのではないかと思っています。

ホリスティック「Holistic」とはギリシャ語の「holos」(全体)を語源とし、ホリスティック医学とは、 従来の西洋医学のみにとらわれることなく「人間とは何か」「健康とは何か」を様々な角度から全体的にアプローチしようとする、 人間まるごとの癒しを考えた医学です。聞きなれない人にとっては、holy(神聖なる・恐ろしい)という言葉のイメージと重なってしまい、 何か怪しい宗教や政治団体のように誤解されてしまいますが、全く宗教的または政治的色彩のない純粋な医学の一分野であります。 要は心身にとって気持ち良く、癒しにつながるものは何でも取り入れて、一人ひとりの患者さんに適合したオーダーメイドの治療を選択するとともに、 病気を悪としてとらえるのではなく、それを一種のサインとしてとらえ、これまでの人生の反省材料(むしろ将来の発展材料)にして、 いかに上手に生きていくかを考えている医学です。ホリスティック医学を勉強することは、患者さんのメリットになるばかりではなく、 治療者自身の健康増進にもつながり、また癒しに関する視野を広げことになります。

1987年より東京医科大学を中心に日本ホリスティック医学協会が発足し、健康学、東洋医学、心身医学、心理療法、 瞑想、食養、理学療法・手技療法、温泉療法、芸術療法、アロマテラピー、自然療法、気功、運動療法、ヨーガ、生命倫理学、 エコロジーなど様々な角度からみた療法を癌や生活習慣病、免疫疾患などいわゆる難病の治療に応用し、 毎年、東京や大阪でシンポジウムが開かれています。

リウマチによる身体の炎症反応には薬物や処置が必要ですが、心の炎症反応にはホリスティックな目で見た癒しが必要です。当院でもすでにホリスティックなアプローチは行われていて、毎日1階ロビーでピアノから音楽が流れ、各病棟詰所の前や生理検査室、外来などでも癒しの音楽がかけられています。患者さんが中心になってやっていらっしゃるカラオケ大会や俳句会やたんぽぽコーラスも一種の芸術療法と言えます。1日3回入ることができる温泉も心のリラックスには欠かせないものでありましょう。今後はさらに、漫才や喜劇のビデオを患者さんに見てもらったり、東洋医学的手法を用いたツボのマッサージや心理療法、呼吸法、アロマテラピー、手技療法、食養生など様々な角度から癒しを取り入れた医療ができればと考えています。

ホリスティック医学の究極の目的は病への気づきから、自分自身の人生を振り返り、自己実現へ向かうことにあります。すなわち、医学だけに留まらず、人生学に発展していきます。福島大学経済学部教授の飯田史彦氏は、生まれ変わりの理論から生きがい論を展開し、「この世で生じる病気や苦悩は、人間が成長するための試験勉強のようなものであり、そのハードルを乗り越えるに値する人がチャレンジしている」と仮説を立てています。我々医療従事者は、患者さんを病人という目で見るのではなく、難問に挑んでいるチャレンジャーとして、尊敬し、応援する気持ちが必要です。そうすることによって我々医療従事者も成長してゆけるのです。まさしく患者さんは診るものではなく、診させてもらい、教えてもらっている方々であるといえましょう。

日常の仕事がマンネリ化し目標を見失いかけたときは、原点に帰って考えてみると良いとおもいます。正しいという漢字は一の下に止まると書き、原点のゼロに帰って一から始めてみることで、本来の正しい姿が見えてくるものです。自分は何のために今の仕事を選んだのか。今の仕事を通して自分は何を得、どのように成長しようとしているのか。患者さんのおかげで我々は仕事ができる。自分の人生で出会うすべての人に感謝できれば、人間はどんどん成長していくのであります。

生きていくうえで大切な5つのHというのがあります。Health(健康)、Heart(心・熱意)、 Hope(希望)、Head(頭・創造力)、Hand(手・働くこと)の5つで、心身ともにいつも健康で、常に熱意と希望をもって、 新しいことを創造しながら働くことができれば、仕事の上でも、人生の上でも、成功できるでしょう。 さらに、もう1つ加えてHolistic(全体感)な視野を持つことができれば、慈愛に満ちた輝いた存在でいることができるでありましょう。 この6Hを大切にして、仕事や人生に励みましょう。